【#1】TRICKSTAR TURBO Project、その始まりは【Vol.1 – Vol.2】
TRICKSTAR TURBO Project―。
時代は内燃機関から電動パワーユニット化が政府主導で進められていく中、TRICKSTARはまだエンジンの可能性を試し切れていないと感じていた。
TRICKSTARのチャレンジ企画でもある「最高速アタック」では、速度を伸ばすという点で一番重要となるのはエンジンの馬力。モーターサイクルでは、アクセルに対してリニアな反応を示す自然吸気エンジンを搭載するものが大半であり、そのエンジンのパワーを上げるためには吸排気効率や燃焼効率の向上、抵抗による出力ロスの低減など、所謂『メカチューン』が主流であった。
しかしながら排気量を変更せず、大幅にパワーを上げていくのは至難の業。そこで目を付けたのが「ターボチャージャー」である。
エンジンに強制的に空気を送り込み、パワーを得られるのが「過給機」と呼ばれるパーツで、過去にもモーターサイクルでKawasaki 750turboやHonda CX500ターボというターボチャージドバイクも存在した。現在ではKawasakiが公道での使用が可能な「スーパーチャージャー」を搭載したH2シリーズを販売しており、クローズドコース専用車両である「Ninja H2R」は排気量998㎤ながらラムエア加圧と合わせると326馬力を発生し、同じ排気量であるNinja ZX-10Rと比べると約100馬力の差がある。
過給機チューンによる馬力アップに夢を見て、この『TRICKSTAR TURBO Project』は幕を開けたのだった。
【1】ターボ製作開始
モーターサイクルのターボ化計画、Ninja ZX-25Rをベースにしたこの活動は2021年夏頃から計画を進めていた。
愛知県豊田市に「アイコードトヨタ」という四輪自動車のコンプリートカーの製作販売を手掛けるショップがある。その店長である鶴田昭臣氏は、ターボチューニングにも精通しており、この方からターボチューニングのアドバイスを頂きながらプロジェクトを進めることにした。
ターボチャージャーはエンジンからの排気ガスを利用する関係上、ZX-25Rの純正エキゾーストは使用できない。ターボチャージャーを使用可能とするため、まずはエキゾーストをワンオフで設計・制作するところからプロジェクトはスタートした。
【2】 ZX-25R TURBO 最初のプロトタイプ
時は進み2021年10月、ZX-25R TURBOのプロトタイプ1号機が完成した。
ZX-25Rのエアクリーナーボックスにある吸気口に、ターボチャージャーからの空気が送られるようインテークパイプを装備した仕様。燃調面では吸入空気が多くなることにより、空燃比は燃料が薄くなるためRAPiD BIKEを使用し燃料が濃くなるようにコントロールする。過給に耐えられるよう、圧縮比を下げるための工夫も加えている。
10月上旬頃、スパ西浦モーターパークで最初にテストした仕様では、ターボによる過給圧は約0.3kgf/㎠、後輪出力は51馬力を発生。燃調のセッティングもまだ手探りの状態の中、エンジンストールすることなく走行が可能な状態ではあった。
改良を加え10月中旬頃には加給圧は0.4kgf/㎠となり、シャーシダイナモでは後軸で約60馬力、計算上ではエンジン出力は約70馬力を発生。ZX-25R日本仕様のエンジン出力が最大46馬力であることを考えると、約25馬力もアップしていることとなる。
トラブルなく走行することのできたZX-25R TURBO プロトタイプ1号機。まずは25馬力増のこの仕様での最高速が気になるところ。
その性能をテストするため、2021年11月14日に日本自動車研究所 城里テストセンターにて最高速テストを遂行。
果たして60馬力の結果は…?
次回→【 執筆中 】